スティーブ・ジョブズやオバマ前大統領のプレゼンには、人の心を動かすボディランゲージが使われていた。聴衆を魅了するリーダーたちが実践する、6つのジェスチャーとは。


 私は数年前、ウィーンで行なわれた起業アイデアのプレゼンテーション・コンテストに同僚とともに招かれ、結果を予想するよう依頼された。それは、2500人のテクノロジー起業家が数千ユーロの資金獲得を目指すコンテストである。プレゼンの間に私たちが注目したのは、起業家が売り込むアイデアではなく、もっぱら聞き手である審査員たちが示すボディランゲージや微表情(訳注:0.2秒ほどで顔に表れて消える表情)だった。

 そして、受賞者発表の前に、受賞するのは誰かを予想した。ほどなく結果は発表され、予想はズバリ的中した。私たちは、授賞式からサプライズを奪ってしまったのである。

 その2年後、また同じイベントに招かれた。今度は審査員ではなくコンテスト参加者を観察した。そのときの役割は入賞者を予想することではなく、プレゼンターの非言語コミュニケーションが、その成否にどの程度寄与するかを調べることにあった。

 私たちは、起業家のタマゴたちを0~15点で評価した。微笑やアイコンタクトの維持、説得力ある身振りといった、ポジティブで自信に満ちたボディランゲージを示すたびにポイントが加算される。逆に、ソワソワした様子や手の不自然な動き、視線をそらすといったネガティブなシグナルを見せるとポイントを失う。その結果、審査員の評価で上位8位までに入った参加者は、私たちが付けたスコアでも15点満点で平均8.3点だった。9位以下の参加者は、私たちのポイントも平均5.5点しかないことが判明した。つまり、ポジティブなボディランゲージは成功と強い相関があったわけだ。

 政治の分野でも、私たちはよく似た相関関係を発見していた。

 2012年、米国大統領選挙の選挙運動期間中、インターネット上で一つの調査研究を行なった。1000人の参加者(民主党員も共和党員もいる)に、再選を目指していた当時のバラク・オバマ大統領と共和党候補のミット・ロムニーが出ている2分間の動画を見てもらった。動画が撮影されたのは選挙戦のイベントで、内容は中立的なものと感情に訴えるものの両方が含まれていた。そして、動画を見ている参加者の表情をウェブカメラで記録し、心理学研究で使われる6種類の重要な感情、すなわち幸福と驚き、不安、嫌悪、怒り、そして悲しみに基づいて分析した。

 私たちは感情の方向性(ポジティブかネガティブか)と、それがどの程度強く表現されたかを評価した。その分析の結果、オバマの演説を見た人のほうが感情的な反応が強く、またネガティブな反応が少ないことがわかった。一方、ロムニーに対しては、支持しているはずの共和党員でさえかなりの数(16%)がネガティブに反応していた。

 そして2人のボディランゲージを分析したところ、オバマのボディランゲージが起業家コンテストの受賞者のものと似ていることに気づいた。オバマは基本的にオープンでポジティブ、かつ自信ある態度を示しており、それはスピーチの内容にふさわしいものだった。これと対照的にロムニーは、ネガティブなシグナルが多く、話している内容と矛盾したり、聴衆の気を散らしたりする表情や動きのせいでメッセージ効果を弱めがちだった。

 もちろん、大統領選の結果がボディランゲージで左右されたわけではない。起業アイデア・コンテストの結果も同じだ。しかし、「適切な非言語コミュニケーション」と「成功」との間に相関関係があるのは確かだ。

 では、どうすれば成功者と同様のシグナルを送れるのか、そして(願わくば)同様の成功を収めることができるのか?私たちは、ボディランゲージ・センター(Center for Body Language)において、さまざまな分野で成功したリーダーを研究し、効果的で説得力あるボディランゲージにつながる、いくつかの姿勢やしぐさを特定した。